コンサルタントのアウトプット図解

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【図解レビュー】日本人の勝算ー人口減少×高齢化×資本主義(著者:デービッド・アトキンソン)のロジックを図解

本日はデービット・アトキンソン氏の「日本人の勝算ー人口減少✕高齢化✕資本主義」を読んだのでロジックを中心に図解レビューしてみました。

デービット・アトキンソン氏の著書は他にも「新・所得倍増論」など多くあり、日本経済の考え方等、とても参考になります。今までの著書と比較すると「日本の勝算」はより多く各種経済資料のデータや海外専門家の論文等のインプットを軸に理論展開されており、新たな気付きも多くある本と感じました。

以下の記事でもデービット・アトキンソン氏の経歴や考え方を垣間見ることができます。この記事でアトキンソン氏が語っている内容をさらに深掘りしたものが本書です。

hbol.jp

本書の構成

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人口減少が待ち受ける未来

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「日本人の勝算」のロジック全貌

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上図は本書で記載されている日本の勝算のロジックの概要になります。根幹は資本主義のアップデートで、そのための生産性向上、そのための最低賃金上昇というロジックと理解しました。

ロジックの中身を少しだけ

昨今注目されている日本の一人あたりの生産性が先進国の中で最低水準という件ですが、以下のグラフから1990年以降の上昇率が小さいため、今の状況に陥っていると推察できます。(縦軸は1990年時のGDPを一律100となっています)

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本書では、日本人一人あたりの生産性を向上させ、現在の「Low road capitalism」から「High road capitalism」に資本主義をアップデートする必要があると述べられています。そのための最も重要な施策が「最低賃金の上昇」という結論です。

最低賃金の上昇が先か、生産性の上昇が先かという議論があります。アトキンソン氏はイギリスの事例を基に最低賃金の上昇をまずは行い、最低賃金の雇用者が比較的多い、サービス業や中小企業の経営者に改革の動機を与えることが必要としています。

 

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reports.weforum.org

上のグラフは横軸に国、縦軸に「人材評価」「最低賃金」をぞれぞれプロットしたグラフです。人材評価はWEFが毎年、その国の労働者の基本的な教養だったりをスコア化したものです(リンクも載せておきます。)。

先進国の中では日本が一番、人材評価と最低賃金の相関が無い結果となっています。かつ、日本の最低賃金は先進国の中で最低レベルの水準です。ここの乖離が日本人のポテンシャルと考え、最低賃金を上げることで人材に変化の動機を与えることで、生産性も上がるという結論となっています。

所感

私も最低賃金を上げるという考え方は賛成です。直近では2018年10月に3.1%上昇しました。しかし、多くの中小企業の経営者から反発ができるくらいの大幅な引き上げ(7〜10%)が必要だと思います。これは本書でも語られている内容です。

www.nikkei.com

 

例えばサービス業。私は今米国に住んでいますが、移住当初、生活はとても不便でした。どこに行くのも車移動、24時間やっているスーパーはほとんどなく、レジ袋に品物を詰める作業は客がやります。

日本も人件費が高くなれば提供しているサービスの付加価値について再考する機会がでてくると思います。深夜のコンビニ営業は付加価値があるのか、そこに二人日の工数を割く必要があるのか。日用品や食品への日本の総需要は、コンビニやスーパーが24時間営業しようが変わらないわけで「生産性を上げるためにはどのように供給すべきか」という議論は必要だと思います。

今までのやり方を見直す作業は根気が要る作業だと思います。その作業を行う「きっかけ」は普及率高く与えなければなりません。なので、ここは企業努力ではなく、政策としての最低賃金の引き上げが必要だと感じました。

但し、動機づけだけでなく、行動に移すためのフォローをすることも重要です。それが「教育」です。今の日本の教育は長くて大学生までで、大学卒業後の教育を受けている人の数は、先進国と比較して低い結果となっています。

過去の高度経済成長期のように学校教育のターゲットが日本の人口の半分を占めるようなケースであれば、学校教育だけでも対象が多いので効果を発揮しますが、現在のように20%にも満たない場合、教育のターゲットも見直す必要が出てきます。

例えば定員割れを起こしている大学のスペースを有効活用し、社会人教育を提供するというアトキンソン氏の考え方は、リソースの有効活用という意味で非常に意義のあることだと思います。

 

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上のグラフは先進国の女性経済参加度と生産性をプロットしたグラフです。本書では最低賃金を上げれば所得の底上げができ、日本の最低賃金労働者のうち、三分の二を占める女性の経済参加度も上がるとしています。

 

こういった経済本は著者の考えと結論までのロジック、そのプロセスを学ぶのが一番の醍醐味だと思っています。例えばアトキンソン氏は本書の中で様々なデータを活用していますが、ほとんどがWEFやヨーロッパの学者の論文等、専門家のデータです。

 

そのデータをどうやって活用し結論を導き出しているのか、少しでも興味を持った方は以下のリンクからご購入ください。

日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義

https://www.amazon.co.jp/dp/B07LFSHW9V/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_mZcpCbQ6PGMPV